機械音痴の父親にiPadをプレゼント
父親が使っていたパソコンの調子が悪くなったと聞き、思い切ってiPadをプレゼントした。
父が5年間使用したSurface
もう5年も前の話になる。父と一緒に家電量販店に行き、パソコンを選んであげた。正直僕も特別パソコンに詳しい訳では無かったが、父1人で行くよりはマシだろう。そう思って一緒に見に行った。
店に行くと、当時革新的だったSurfaceが目に付いた。画面をタッチできる上に、キーボードを外せばタブレットとしても使える。軽さも売りだということで、ゆっくりとSurfaceを持ち上げてみる。
すると、突然ひとつの光が差し込んだ。どこからともなく聞こえる動物たちの鳴き声。持っていたはずのSurfaceは、いつのまにかライオンの赤ちゃんに変わっていた。
「シ、シンバなのか?」
思わず笑みがこぼれ、天高くシンバを持ち上げた。僕は今、奇跡の瞬間に立ち会っている。感動で体の震えが止まらず、涙が出そうになった。
「……様」
誰かの声が聞こえる。いや、気にすることはない。僕は今、奇跡の瞬間に立ち会っているのだから。
「お客様!!」
おきゃくさま……?ふと我に帰ると、目の前にいたのは店員と父。周りを見渡すと家電ジャングルが広がっていた。
想像を掻き立ててくれる最高の一台。もう迷いはなかった。
「これにしよう!」
こうして、僕の独断で父はSurfaceを手に入れた。思い出たっぷりのSurfaceは、早いことに購入してから約5年が経つ。動作が鈍くなり限界を迎えてきているらしい。
中古で購入したiPad
新年を前にプレゼントしてあげようと考え、中古のパソコンショップへ。「そこは新品じゃないの?」という声が聞こえてきそうだが、新品は気軽にプレゼントできる値段ではなかったので大人の事情ということで。
当初、タブレット型パソコンを購入しようと考えていたが、iPadを目の当たりにして気持ちが揺らいだ。店員に「ネットだけならこれで全然問題ないっすよ」とアドバイスをもらったのが決め手だった。ネットで競馬や麻雀をやる程度なので、これで十分だと思い購入。
プレゼントを持って父の元へ
父はパソコンに詳しくない為、初期設定を全部代わりにやった。ネットも使えるようになり、「さあ父よ、後は自分で頑張ってくれ!」とでも言いたいところだが、機械音痴なのでいきなりiPadは難しい。
何とかなるだろうと思い、軽い気持ちで使い方を教える。電源の入れ方、アプリ、ネットの使い方を説明していると、気付けば1時間が経っていた。
最終的にホーム画面は最小限にし、アプリをわかりやすくカスタマイズした。基本操作は覚えてくれたのでとりあえず良しとする。
おわりに
プレゼントを受け取っても大きなリアクションもなく、ありがとうと何度も言われることもない。しかし、その覚えようとする姿勢が僕にとっては嬉しい。
自分がプレゼントした物に興味を持ってくれると、それだけで満足する。見返りを求めている訳ではないし、ありがとうの言葉を欲しい訳じゃない。
僕自身もまた、親に感謝の気持ちを素直に伝えることは苦手だ。男はきっとそういう生き物なのだと思う。ある意味、父が機械音痴で良かったと思えた夜だった。